3人がそれぞれ互いに目配せをする。
自分達の気持ちが通じ合っていると、本気で錯覚してしまう程、思い通りに音楽が進む。
ユキが更にドラムを強く叩きつけた。
そこでおれ達の演奏は終わる。

葵「ふぅーっ。気持ち良かったなぁ」

寵「意外にイケるもんだね」

誠「ねぇちょっと!! おれ演奏に入ってなかったよ?! 何で止めちゃうの!
ちょっと入るの難しいかなぁって思ったけど、葵も入っちゃったしスゲェみんな楽しそうにやってっから、おれも便乗しちゃおーかなぁ~って感じだったのに!!」

寵(…ヤバい、おれマコの事一瞬忘れてた…)

すっかり気を許した仲と言えど、特におれはほんの何時間か前にこいつらと打ち解けた人間だ。
やはりまだ多少は気を遣う訳で、おれはマコに掛ける言葉を探していた。
そこに━━━…

雪「…あ、ゴメン今マコの事すっかり忘れてたよ。しかもおれ、この部屋に3人しかいないって本気で思ってた。…マコ存在感無さ過ぎ」

寵(言いやがった━━━っ!!
こいつスカした顔で意外に毒舌なんだな…。しかもおれと同じ事思ってたと思ったら、その先までサラリと言いやがるし…)

葵「アハハハハッ!!」

いやアハハって…。
笑い事じゃないだろ。
ほら、本人が…

誠「おっおれ、そんなに存在感ないかな…?でもさ?おれ一応自分の事をムードメーカーだなんて思ってたりもしててね…?みんなを元気付けるのはおれの役目だとか勝手に思っててね…?だからさ…
 そんな事言わないでぇ━━━っ!!!」

男泣きしちゃった。
確かに ″あの″ ユキが言った言葉は無駄に重く感じるよな!

…って心の中で勇気付けてどうするんだおれ。

取り敢えず今の内はこいつらに愛想尽かされない様にしなくては。

寵「ゴメンてマコ。…えーっと…ホラ…アレだよ…」

寵(ヤベェ、言葉が見付かんない)

葵「ホラ!男がんな言われたぐれーでメソメソすんな!そんなんじゃ図星ですって言ってる様なもんだぞ。次からはお前もちゃんと入って来いよ!」

誠「葵くぅ~ん♡ スキッ!!」

誠「キモイ。それにお前面倒くさいからやだ」

こうしておれ達の夕方は更けていった。