子供の頃から、お母さんの化粧品で遊ぶのが大好きだった。
勝手に遊んでは怒られて、仕方なく少しだけメイクをしてもらって…口紅をひとつ塗るだけで、鏡に映る自分がすごく大人の別人に見えたのを今でも覚えてる。
アイシャドウに色付く瞼、マスカラで印象の変わる目…それらにわくわくしてドキドキして、その気持ちは学生になっても変わらず、いつしかこの魔法のアイテムを作る側になりたいと思った。
私の性格は、どちらかと言えば負けず嫌い。やるなら会社一番になりたい。
そう決めて、短大を卒業してから就職したのは大手で大本命だったこの会社だった。
それが7年前の、春。
大学から一緒の私とかおりが入社した時には、彼は既に第一商品部のリーダーだった。
『第一商品部代表、真崎だ。新入社員の皆、入社おめでとう。この場にいるということは、それぞれ認められる点があって受かったんだろう。この会社ではその点を生かして、様々な仕事に取り組んで貰いたいと思う』
真崎、そう名乗ったのはまだ若い小柄な男性。
少し柄の入ったスーツに、セットされた髪型がいかにも若者っぽい。けれど凛々しい目をしていて、すごく堂々としている人だと思った。



