「これ…わざわざ買ってきてくれたんですか?」

「その足じゃ売り場立てないだろ」

「あっ、じゃあお金!払います!」

「いいよ。その分接客に専念して売上とれ」



そう言って私の足に新品のその靴を履かせる手。靴は驚くほどぴったりと、私の足を包み込む。



「お、丁度いいな。さすが俺」

「本当だ…ぴったり」

「これに懲りたら日頃から低いヒールを履く習慣をつけるんだな。それでもって俺を見下ろすのをやめろ」



そしてふふんと笑みを浮かべ、私の頭をポンポンと撫でた。

その小さな優しさに微かに鳴る心の音。



(…優しい、人)



偉そうに言うくせに、恩着せがましくなくて

笑顔でこうして引っ張ってしまう





「ほら、売り場戻るぞ!」

「あっ、はい!」



堂々と歩くその背中を追いかけるように歩きながら、痛みのひいた足からその優しさを感じる。



(…悔しいなぁ)



ほんの少し、優しさにドキってした

この心の近く

首元には、指輪がひとつ揺れるけれど