ープルルル…ピッ、
『もしもし、知香?どうしたの、いきなり休みなんて…』
『…かおり…ごめん、さすがに…無理で、』
『…?泣いてるの?一体何が…』
『…、…』
ある秋の日、知香が突然休んだことがあった。
いつもなら熱があろうと怪我をしようと出勤してくる仕事バカの知香がどうしたものか。心配で電話したところその声は明らかに元気がなく、急いで知香のアパートへ駆けつければ、そこにはぐしゃぐしゃな顔に髪もボサボサで弱ったその姿があった。
『どうしたのよ、知香…』
『…ごめ…、結婚、なくなっちゃった…』
『は…?』
『…圭介、浮気してた…』
薄暗い部屋で泣き崩れる知香に、肩を抱いて話を抱いて話を聞いた。
相手が浮気をしていた、可愛くない女と言われて、結婚出来ないと言われた。ぽつりぽつりと話しながらとめどなく涙を流す知香に、私はいつもみたいに言葉をかけることは出来なかった。
何を言っても気休めにしかならない。励ましの言葉は、今はその耳につらいだけ。
そう勝手に諦めて、あれだけ心を支えてくれた知香に私は何ひとつ返すことも出来ずにいた。



