「…、」
肩を落とし歩いていると、視界に入った姿がひとつ。
「…あれ?奥谷さん?」
「浅田さん…」
それはコートを羽織った浅田さんで、目が合った途端彼は少し驚きながら笑みを浮かべる。
「今帰りですか?」
「うん。仕事の後少し友達と飲んでて…奥谷さんは今日飲み会だったんだっけ」
「はい。さっき終わって…」
「あれ、悠は一緒じゃないの?」
「あ…はい、真崎さんには…その、久保さんが」
「……」
ぼそぼそと言う私に、浅田さんはあー…と察したように苦い顔を見せた。
「二人に遠慮しなくても、悠は久保さんとより戻したりはしないと思うけど…」
「…そんなの、分からないじゃないですか」
「?」
「それにどう見たって似合ってる二人を見たら、私なんて入る隙ないなーって、思ったりして」
「……」
(って浅田さんは私の気持ち知らないのに!こんな言い方したら…)
「あっ、いや、今のはその…」
「?あ、うん。誤魔化さなくてもいいよ。奥谷さんの気持ちは何となく分かってたし」
「え!?」
言ってから気付き誤魔化そうとするものの、とっくに知っていたらしい浅田さんは驚きもからかいもせず穏やかに言う。



