「どんなに周りにバカにされても、傷付いても、あいつはここで逃げずに頑張り続けた。すぐ大阪に異動願い出して逃げたお前と違ってな」
「なっ…!」
「確かにお前の見た目はいいよ。相変わらず可愛い顔してる。だけど、あいつのほうが人間としても女としても何倍も魅力的だ」
どれほど涙を見せられても、体に触れられても
微塵も心は動かない
きっとこの気持ちが俺にとっての愛なんだと思う
「…、」
「…そういうことだから」
返す言葉なく無言になる郁美に、俺はその体を離しては丁度来たタクシーを手を上げ停まらせた。そして押し込むような形で彼女を車内へ乗せる。
「すみません、これで彼女送ってください。お釣りいらないんで。…郁美、ホテルの場所は説明出来るな?」
「……」
そう運転手に一万円を手渡すと、泣きそうな顔でこちらを見つめ続ける郁美から手を離した。



