(な、何でいきなり…)
おじさんたちでぎゅうぎゅうなタクシーの後部座席で、私は窓に顔を押し付け流れる街の景色を見つめる。
「これであいつらも心置きなく二人きりになれるだろ!」
「へ?」
「何だ奥谷、お前鈍い奴だなぁ。別れたとはいえ付き合ってた男女が酒入って二人きりになれば…自然とそういう形になりやすいだろ?な?」
「あー…だから、」
「そう!部下の仲を取り持つなんて、いやぁ俺いい上司!」
つまりこの上司たちは二人がうまく復縁出来るよう、私もタクシーに乗せたわけで…その思惑通り、今あの場には二人だけが残されているのだろう。
そう考えるとまた胸が痛くなるけれど…よかったの、かもしれない。
そうも思ってしまう。
また逃げ出す、弱いままの自分
昨日あんなにかおりにも励まされて決めたのに
気持ちにも向き合ったのに
どうしてそのまま彼には向き合えないんだろう
あの日以来、初めて人を好きになれた
伝えたいと思った
なのに結局、何も言えないまま
こうしてるうちにも二人は手と手をとるかもしれない
「…、…」



