「だから、『やり直せない』って振ってやりました」
「…勿体無い。優しくて背が高くて大手企業なんて優良物件、お前じゃもう二度と出会えないぞ?」
「いいんです!人間中身ですからっ」
胸を張って言ってみせる私に、彼はふっと笑顔を見せた。
二度と出会えないかもしれない
けど、いいの
偉そうで
背が低くて
だけど優しくて、真っ直ぐなあなたと出会えたから
後悔はない
きっとまた、一歩進める
「…ありがとう、ございました」
「?俺は何もしてないけど」
「いいえ。全部、真崎さんのおかげですから」
あなたのくれた
言葉、笑顔、あたたかさ
それらがあったから
「……」
笑って言った私に、彼は伸ばした手でわしわしと私の頭をぐしゃぐしゃにするように撫でる。
「わっ、何するんですか!もう、頭ぐしゃぐしゃ…」
「よし。気分がいいから飲みに行くぞ」
「へ?」
「今日は特別に、お前が飽きるまで元彼の愚痴を聞いてやる。だから思い残すことなく話せ」
「……」
そう強引に話をまとめると、行くぞ、と彼は歩き出した。



