「?これ…」
「俺の携帯。喜べ、プライベートの方の番号は会社の奴でも滅多に教えてないぞ」
「……」
「こっちなら、会社にいない時だって休みの日だって出られるから。いつでもかけてこい」
『いつでもかけてこい』
心を許すようなその優しさ。
それがまた嬉しくて、その紙を手にとっては口を開く。
「…真崎さんには、どうでもいいことかと思ったんですけど」
「?」
「圭介…元彼と、会ってきました」
「……」
小さな一言に、彼は少し驚いてはすぐに真面目な顔となる。
「連絡、取ったのか」
「あ…いや、そうではないんですけど。家の最寄り駅で、待ってたみたいで…行きあって」
「…それで?」
「『やり直したい』って、言われました」
「……」
ひと気のない、夜の社内。ロビーには私の声がひとつ響く。



