「わ…浅田さんネイル上手いですね」

「そう?よかった」

「男の人なのにすごいですね。私ネイルだけはどうも苦手で…いつもはみ出ちゃったりムラになっちゃったりしますもん」

「あはは、必死で練習したからね。俺も元々は苦手だったんだけど、悠に『何か一つはこなせ』って鍛えられて」

「真崎さんに?ていうか真崎さんってメイク出来るんですか?」

「悠はプロ並だよ。メイク系の専門学校出てるくらいだし」

「えぇ!?」

「ほら、向こうでやってる」



浅田さんの言葉に示す方向を見ると、そこではまさしく丁度椅子に座らせた女性社員にメイクをしてみせているその姿がある。



「アイシャドーはゴールドを下地にベージュ、ブラウン。この色が割と無難で好きな人も多い。いつもこの色を使ってるって人には他の色を提案してみるのも手だな」



その指先は優しく手際よく

目元、頬、唇を彩っていく



「特別な技術より、大事なのは感覚だ。肌を見て雰囲気を見て、似合う色を乗せて元の良さを引き出す。メイクはほんの少しの足し算と大きなかけ算だ」



まるで魔法をかけるように