結局結婚の話は破断。心は一気に冷えて、思い出すことも引きずられることも嫌だったから全てなくすことにした。



写真、家具、食器…二人の記憶の染み込んだもの、それら全てを捨てて引っ越した今の部屋。

新品の家具に囲まれた部屋で一人きりになって、ようやく初めて涙が出た。



結婚って何なんだろうな

恋って愛ってなんだろう

紙切れ一枚に誓うもの、心が動けば終わるもの

なんて、くだらないもの



けれど、そんなくだらないものに幸せを感じていた自分はもっと何なんだろう。



考えれば考えるほど余計わからなくなって、周りからかけられる同情の言葉に嫌気がさした。それらを紛らわす為にも、尚更仕事に没頭した。

働いて、働いて。いつしか面影も薄れ、年月が経つごとに自分の気持ちと向き合えるようにもなって、恋愛も出来るようにもなったし『結婚はしない』なんてそんな諦めは捨てた。



(…それでも、傷は消えないけれど)