真っ直ぐに伸びたその背筋。上から目線で強気な物言いをしながらも、きっとその心は誰よりも奥谷のことを気にしているのだろう。
「和泉さんのグーって痛そうだよねぇ」
「…そうだな」
「殴られないように、しないとね」
「…そう、だな」
何が正しくて、間違いで
何が成功で、失敗なのか
それすらも分からない俺の言葉は、彼女にとって荒療治と呼ぶのに相応しいくらいだろう。
けど俺は思うよ
傷つかない為に逃げることが、幸せなんだろうかって
確かに傷付けば痛いだろう
心に傷痕は残る
『悠は…冷たいよ』
今もまだ、この心にも残っているように
けど、それでも触れずにはいられない
いつか傷付くだろう
いつか泣くだろう
そう分かってはいても、気持ちに嘘はつけない
誤魔化しも出来ないし消すことも出来ない
だから向き合いたいと思うよ
いつだって
この心と、その心と



