「知香はね、バカなんです」
「へ?」
「バカがつくほど全力で、向上心があって意外と純粋で」
「……」
「あの浮気男のことも大好きだったし大切にしてた。…だからこそ、傷付いてる」
「…あぁ、」
きっと誰より近くで見ていたのであろうその目は、暗く影を落とした。
「おまけに頑固だから、しないと決めたらしないって譲らなくて。私が何を言っても無駄なんです」
「…だろうな」
「でも私は偉そうで無駄に自信満々な誰かさんなら、正面からぶつかってどうにかしてくれるんじゃないかって期待してる」
「……」
「…失敗したらその時は真正面から殴りますから」
そして和泉はそれだけ言い切り、またコツコツと足音を立てその場を後にした。



