「どうして、か…まぁ、30越えて気持ちが落ち着いたっていうのもあるけど、自分の本心を認めたっていうのも、ある」
「本心…?」
「くだらない、そう思いながらも完全に断ち切ることなんて出来ない。誰かを好きになることも当然あるし…結婚してる奴の話とか聞くとさ、やっぱり羨ましいって気持ちがあるんだよ」
「……」
完全には断ち切れない思い
羨ましい、気持ち
「だって家帰ったら好きな相手が『おかえり』って出迎えてくれるんだぞ?家庭っていいなーって思いたくもなる。そんな自分の気持ちを知った時に、やっぱり俺は一人じゃ生きられないって思ったし、生きていくなら好きな人の為に生きたいって思った」
「……」
好きな人の、為に
そう呟く瞳はとても真っ直ぐに
「いつか裏切られるかもな。傷ついて、泣くこともあるかもしれない。…けどそれでも信じられる相手といられることが、まず大切なことなんだとも思うよ」
また、繰り返すかもしれない
あの日の心の痛み
好きになんてなるんじゃなかった
愛なんて、未来なんて
全て理想で幻想
それでも、信じられる相手といられることが



