『…私は一生結婚なんてしません』
『一生ひとりで生きるから、それでいいんです』
奥谷は、よくわからない奴だ。
野望も声も背もでかい。やたらと強気で噛み付いてきて、いつでも全力で仕事をしてる。
かと思えば不意に弱さを見せたり、照れたりして。
(日頃キツいタイプなだけあって照れる姿が可愛いとも思うけど…)
そんな彼女の心の奥を知りたい。
そう思う自分の心も、よくわからない。
「…あ」
「…あら、真崎さんに浅田さん」
そう浅田と歩き出すと、向かいから歩いてくるのはいつも奥谷と一緒にいる美人…和泉。彼女は黒く長い髪を揺らしこちらを見る。
「和泉、奥谷は?」
「知香ならさっき全力でどこかへ走って行くのを見ましたけど」
「走って、って…」
泣き顔を見られまいとどこかへ避難しに行ったのか、逃げるように走るその姿が簡単に想像つく。



