そう、俺も意味がわからない。
会議終わりに奥谷に少し触っただけでセクハラ扱いをされ、逃げられ、部長に睨まれた。
その場を何とかやり過ごし、ボールペンを忘れたからと届けに来てみたら泣きそうな顔の奥谷がいて、問い詰めたら泣いて逃げられ…。
(そもそも何で泣きそうだったんだ?何で泣いたんだ?怒ったつもりもそこまできつく問い詰めたつもりもなかったのに…)
思わず頭を抱える俺に、浅田は首を傾げた。
「悠ってば、ついに奥谷さん泣かせちゃったの?」
「別に俺のせいで泣かせたわけじゃ…っておい待て。何で奥谷の名前がすぐ出てくるんだよ」
「だって悠がそうやって気にかける相手といえば彼女くらいでしょ。他の女の子相手だったら『知るか!泣かせとけ!』ってあしらうのに」
「……」
自分では特に気にしていなかった特別な意識も日頃一緒にいる浅田からすればよくわかるものらしく、図星に黙り込む俺にその顔はふっと笑う。



