女の涙なんて見慣れてる…とまではいかなくても、何度も見てる。

けれど、その瞳からこぼされた涙はどうしてか心を激しく動揺させた。





「……」



(…奥谷に、泣かれた)

そんな出来事に少し驚きながらも第二商品部のオフィスを出ると、そこには丁度通りがかった背の高い眼鏡の男…同期である浅田がいた。



「あれ、悠。第二で何してるの?」

「…なぁ浅田」

「ん?」

「女が泣く時って、どういう時だ?」

「はい?」



唐突にぶつけた俺の質問に、眼鏡をかけた穏やかそうなその顔は意味が分からなそうに困る。



「えーと、ちょっと質問がざっくりしすぎてて…例えば状況とかは?」

「ボールペンを届けに来たら泣かれた」

「うん、ますます意味が分からなくなったね」