「…奥谷…?」

「っ…」





いやだ

見られたく、ない



その一心で私は思い切り彼の手を振り払い、オフィスを飛び出す。



「……」





最悪だ、私

気持ちが緩んで泣くなんて

今までずっと誰の前でも平気だったのに





『可哀想だよね』





あの言葉の後に、彼に触れられた

それだけで涙がこぼれるほど弱くなるなんて



(本当、最悪…)



続いて溢れ出しては止まらない涙を隠そうと、足は長い廊下を駆け抜けた。