「…?どうかしたか?」
「な、何がですか?」
「泣きそうな顔、してるけど」
「……」
泣きそう、
泣きたい、
だけど唇を噛んで、堪えて
「…あはは、何もないですよ。ペンありがとうございました。私このペンじゃないとどうも書きづらくて…」
「……」
誤魔化すように笑みを作り、差し出されたボールペンを受け取る。ところがこの手をガシッと掴むその手。
「何でもなくないだろ。何かあったならちゃんと話せ」
「…、」
「奥谷、隠すな」
力強い手に、真っ直ぐに見る眼差し
正面から向き合おうとする彼の言葉は
閉ざす心を開けようと触れる
大丈夫です、
そういつものように言えばいい
さっきと同じように
また、笑って
心を見られないように
「…もう真崎さんってば、大丈夫ですってば」
「……」
「本当に、大丈夫…」
けれどそう言いかけた瞬間、瞳からボロッとこぼれたのはひとつの涙。
それは頬を伝い一筋の線を描き、床へぽたりと落ちた。



