(…ちゃんと、笑えてたかな)
私、普通に話せてたかな
気にするな、大丈夫
可哀想なんて言葉
あの日から嫌ってほど聞いてる
気まずそうなあの顔も嫌ってほど見てる
慣れてる、大丈夫
そう思うのに
この心はその度いちいち痛むんだ
慣れてるのに、慣れることなく
痛くて苦しくて、どうしようもなくて
ほらまたこうやって
泣きそうになってしまうんだ
「奥谷?」
「…?」
すると突然呼ばれた名前にドアの方を振り向くと、そこには私のボールペンを手にした真崎さんの姿。
「真崎さん…」
「お前会議室にペン忘れてたぞ。ほら、これ」
「あ…すみません、」
「ったく、しかも大声でセクハラなんて叫びやがって…おかげであの後来た部長にすごい目で見られただろうが」
「……」
至って普通に話す真崎さんに、泣きそうなのを気付かれないようにとグッと涙を堪える。
けれど彼は目敏く、鋭い視線をこちらへと向けた。



