(…仕事中だっていうのにまた喋ってる)



女ばかりの職場では日常的にあるその光景。少しくらいの立ち話ならともかく、彼女たちの話は長い。平気で一時間は話していたりする。

それを遮るためにも注意をしようと、溜息混じりでドアを開けようとした。



「そういえば祥子、結婚式年明けだっけ。ドレスとか決まった?」

「…?」



その時聞こえた『結婚式』の言葉にピクリと手が止まる。



「うん。もう料理とか決めて、演出も決めてー…」

「確か式場って綺麗で有名な所だよねぇ、楽しみー」



祥子、そう呼ばれる私の後輩は嬉しそうに話すものの途端に表情を曇らせた。



「けど、実はさ…」

「?どうしたの?」

「ま、まだ…奥谷さんに招待状、渡せてなくて」

「えぇ!?」



(結婚式、っていうか…結婚すること自体聞いてないんだけど)

初めて聞くその話。どうやら話に乗り遅れていたのは私一人らしく、思わずドアを開けようとした手を引っ込める。