翌日、図書委員の仕事でいつもどおり登校すると、下駄箱に手紙が入っていた。
ラブレターとか一瞬期待したけど、差出人を見てその可能性は消えた。

明日とかに、蕎麦屋の入り口に置いといていいよ。
渡瀬


茶封筒に入っている割には、文が質素で簡潔だった。
明日立て掛けとこう、と封筒を鞄にしまいながら廊下を進むと教室の前で春菜が待っていた。
遅い、と一喝された私はジュース奢る約束で許してもらった。

「それにしても、委員会3年制はきついよねぇ」
春菜が本の整理をしながらそう言った。
秋岡高等学校は、一年生で委員会を決めて、その後3年間続けなければならない制度であった。
楽そうという理由で入った図書委員は、他の委員会よりだいぶいそがしかった。
「他のにしとけばよかったね」
今更そんなこと言っても遅いのは春菜もわかっているのでこの会話は特に弾まず、たまに本を借りにくる生徒を待っていた。


気づけば翌日。
遅刻気味だったので傘は帰りに返そうと、熱気ムンムンのアスファルトの上を傘を持って早歩き。
学校へつくと、またもや春菜に喝をいれられ、今度はアイス一つの約束で許してもらった。
いつもどおり仕事を終え、春菜と別れて帰路に向かう。
一人で帰るのももう慣れた。近所にたくさん同級生がいた中学生時代とは違う。
蕎麦屋へついて傘を立て掛けると、丁度中から渡瀬が出てきた。
「あ、渡瀬。丁度良かった。、助かったよ」
そう言って傘を渡すと、はいなーと言って傘を受け取った。
「今日は私服だね。今から帰るの?」
「え」
一昨日は蕎麦屋の制服だったのでなんとなく聞いてみたが、なにか変なこと言っただろうか、渡瀬の動きが止まった。
「あー、俺ん家ここだから」
「ふーん.....へ!?」
いま一瞬頷いてしまった、ちょっと待って私今までただのバイトだと_____
「俺で4代目」
「……………」
ここまでの勘違いってあるだろうか。
完璧にただの金稼ぎとばかり思っていた。
たしかに何度かここを出入りしてたのは見たことあった。
しかしそれは全て制服姿だったので、バイトとしてここで働いているのかと普通に納得していた。
「えーっと………ごめん、苗字なんだっけ」
「……えっ?!あぁ、河野、だけど」
「なんか具合悪い感じ?」
きっといま私はかなり真っ青な顔をしているに違いない。大丈夫、それじゃ、と言って私はそこから立ち去った。