8月17日、天気は雨。
こんな夏真っ盛りの時に雨なんて、せっかくの夏休みが台無しだ。
それでも私は、友達との約束を守るべく、1キロほどある学校まで足を進めていた。

「もー、受験だってのに、なんなのこの忙しさ!ねー、ちとせ!」
さっきから手よりも口を動かしているのは、同じ図書委員の和田春菜だ。
いくら名前が優雅でも、性格は生活の中で決まってしまうというのは事実だろう。
お世辞にも絵が上手いとは言えない春菜の努力は凄まじいものだが、意地悪な神様は努力の姿勢だけでは認めてくれない。
かなり手をこんだつもりだったがまだ途中なのに失敗感がまるまるだ。
「夏休みなのに、学校に来て本の紹介ポスター書くのは疲れるよね」
我が秋岡高等学校では委員会への強制参加があり、わたし達は楽そうな図書委員を選んだ。
思ったのとはかなり異なったが。
「しかも絵下手なうちらがペアなんて」
さらに神様は意地悪を続け、くじ引きのぺアは絵が下手な私と春菜。
「もう災難としか言えないよ」
そんな愚痴を二人で言いながら、雨の性で湿っている画用紙にレイアウト通りの絵を書いていく。

彼と出会ったのも、こんな夏の雨の日だった。