一人よりふたりで。

困っている人がいれば助けるし、迷っている人がいれば忠告する。
そんな当たり前のことが自分にはできない。

あれは12月。
留学をかけたコンペを前に、リス子が風邪で寝込んだことがあった。

いつだって頑張り屋の彼女のことだから、
男と同じ体力があるわけでもないのに、頑張りすぎて、
体調を崩してしまったのだ。

「もうコンペも近いし、休んでなんかいられないよ」
と言うリス子に

「ばーか。そんなんでイイデザイン描けるわけないだろ。
風邪をうつす気が」と冷たく言い放つ。

一番側にいたのに気遣ってあげられなかったイライラや
自分へのふがいなさでつい出てしまった言葉だった。

「ごめんなさい」
そう言って、駆けだすリス子をみたとき、
自分が失敗してしまったことに気づいた。

ただゆっくり休んでほしかっただけなのに、
どうしてこんな酷いことを言ってしまったんだろう。

謝りたくて、授業が終わると、
ドラッグストアーに駆けこんで、目を丸くする店員に命令する。
「風邪に一番効く薬をくれ!」