こいつらは、俺が気を利かせてわざと距離を取ってることに、気付いていないのだろうか。


いや、和泉あたりは気付いてて、あえて俺を輪の中に入れようとしている気がするが。


なんというかもう、そういうことをされるほうが、俺的には辛いというか。


これじゃ、俺が今までしてきたことが全部、水の泡だ。








「あ、そうだ、俺二人に話があってさ」




何杯目のグラスが空になった頃だろう。
和泉が、何やら意味深なことを口にした。


酒の弱い瞳はもうすっかりぐでぐでで、こんな空気は察していないんだろうけど、俺には嫌な予感しかない。



「俺、彼女できた」



今度は、嘘だ。

俺はすぐに分かった。

ただ、彼女にとってはよほど衝撃が大きかったようで、箸と箸の間から、挟んでいた唐揚げがこぼれ落ちていた。



「・・・え?なに?彼女って!え?」



あからさまに、動揺している。

素面だったらまだ、誤魔化しも効いただろうに、これじゃバレバレだ。

そんな分かりやすい彼女を前に、和泉は演技を続ける。



「同じバイトの子なんだけど、ずっと好きで・・・」



俺は黙って、嘘のエピソードを飄々と話す和泉と、真っ青になる瞳とを、交互に見ていた。



「・・・・あ、ごめん。彼女から電話だ、」



そう言って席を立った和泉の背中を、これでもかというほどガンつけて睨む。

彼女、じゃねーだろ



お前が好きなのは・・・・