今にも泣きだしそうな彼女は、急に顔をあげた。
そして、僕に優しくキスをした。

「これだけで幸せだよ。私はもう幸せになれた。だから、私を忘れて下さい。」

その時、電車がホームへついた。

彼女は僕に背を向け、電車の方へ歩いていく。

“待って!”心の中で叫んだが、言うことはできない。彼女の背中には、覚悟が見えたから。
もう僕のことを忘れるつもりなんだろう。

電車に乗ると、振り返ることもしなかった。

それを見送ることが僕に出来る唯一のことだった。

さようなら。今度こそ本当にさようなら。