「早く乗れ!」
黒い車が僕の横にとまった。

僕を二度も撃った男だった。

でも捕まるわけに行かない。
背に腹はかえられない。
僕が乗り込むと急発進でその場を後にした。

「上出来じゃないか。さぁ金をよこしな。」

「待ってくれ。まずは彼女を…」

「うれせぇ!あいつは死んだよ。自分で舌を噛みやがったんだ。」

そんな訳は…そんな訳ないだろう!

「嘘をつくな!」
「ちっ物分かりの悪いやつだ。ならあわせてやる。」

さっきの港の別の倉庫。
そこに彼女はいた。ぐったりと倒れ込み、まるで生気を感じない。

近付いて顔を見ても瞬きすらしない。淀んだ目。何度も泣いたのだろう。涙のあとが頬に残っている。
なんでこんなことを…

でも微かに脈がある。
「助けにきたよ。ほら。もう帰れるんだ。寝てないで起きろよ。なぁ、帰ろう。」

涙が止まらない。僕のせいでこんな…

こんな…

彼女の目が少し開いた。口も微かに動いている。
「どうした!?」
少しの風で掻き消されてしまいそうな程小さな声で、たしかにありがとうと言っている。 僕のせいなのに…

「聞こえたからもうなにも言うな…。」

ごめん…ごめんじゃ済まないのはわかってる。

だけどそれ以外に言葉がでない。