気分を晴らそうと、アパートを出て散歩を始めた。

アパートの前に立ち尽くす女性を横目に見ながら、なんとなく初めてこの街に来た時の道を歩いた。

あの頃と変わらぬ景色なのに、なんだかあたたかい。

ここは僕の街。

今ではそう思える。

不安だった毎日が懐かしい。

いい仲間に出会えたことが、僕にそう思わせてくれるんだ。

感謝してもしたりない。

天気も良くなってきた。今日も一日がんばろうと背筋を伸ばした。

さあ帰ろう。

アパートの前にはさっき横目で見た女性がまだいた。

何をしているんだろう?

通り過ぎる時、顔を見ると見覚えのある顔だった。

僕は慌てて部屋に戻り窓から女性を見た。

やっぱりそうだ。あの人だ。

田中はまだ寝ている。

チャンスは今しかない。
確かめなければ。