飯間は自分を責めたんだ。優柔不断で、断られたらどうしようなんて考えているうちに時間だけが過ぎていった。そして彼女を失った。

後悔しているに違いない。

部屋に残された彼女との想い出が、飯間の時をとめていた。

僕にはわかるんだ。きっと田中にもわかるだろう。飯間の気持ち。

僕ら三人は凄く似ているんだ。
もともとは一人の人間だったように思える。

二人とも、自分の道を歩み始めた。

僕はそれを邪魔するわけにはいかない。

頑張れなんて言えない。
僕なんかより大きなものを抱え、頑張っている彼らにそんなことをいうのは失礼な気がする。

飯間の旅立ちの日、僕だけが新幹線のホームにいた。

田中は呼ばなかった。

仕事が忙しい田中を見送りのために休ませるなんて出来ないという飯間の意見を尊重した。

「短い間だったけど世話になったな。また会えるんだから、その日までさよならは言わない。」

「ああ、わかってる。じゃあまた。」

「元気でな。」

手を振る飯間に僕も手を振り送り出した。