飯間は、呼吸も上手く出来ない様子だった。
それほど怯えていた。可哀相に。

男の声がする度に、ビクッと体がはねている。

「そうですか。しかしこちらには誓約書があるんです。そこにはちゃんとあなたの同意がある。裁判で戦いましょうか。」
男は強気だった。勝算があるのだろうか。

「そうします。俺は負けない。」

田中も強気だった。

これからどうなるのかわからない。

たとえ不当な利息を払わなくても、借りた金は返すのだろうけど、田中にはその金すらない。弁護士を雇ったなら弁護士にも払わなくてはならない。

田中はどうするつもりなんだろう。

僕はそっと見守ることしかできない。

飯間の顔も次第に落ち着いて来た。

なんだか全てがうまくいくような、そんな気がしてきた。