「あ、あの、加賀さん、熱でもあるんですか……?」

「は……?」


ここでようやく加賀くんが顔を上げてあたしを見下ろした。


ああ、ここからの加賀くん最高。


ぱっちり二重が際立っている。


「変な食べ物とか、はたまたどっきりとか……」


私はあたりをキョロキョロと見渡して、どこかに「どっきり大成功」と書かれているパネルがないか探した。


その時、どこかで「ついに、ついに紗枝と加賀くんがー!!」なんて茜の叫び声が聞こえた。


それに伴い「うるせーぞ、茜! 加賀は案外心弱いんだからな! あいつ、今を逃したら一生告白できないんだからな!」という加賀くんの友達であろう男の声も聞こえてきた。


興奮しているのかきゃーなんて茜の悲鳴も聞こえてくるし。


やっぱり、どっきり?


私、騙されてる最中?


まあ、大抵ぼけっとしているから騙されやすいように見られるのかもしれないけど。


「違うから」


遠くの声に気を取られていた私を現実に引き戻したのは、やはり目の前のイケメンくん。


「あいつらは俺に協力してくれただけだから。橋場さんも」


橋場さん、とは茜のことだ。


それにしても、バド以外でこんなに真面目な顔をしている彼を初めて見た。


いつも猫みたいに誰にも媚びず、ふざけて笑っている彼しか見たことがなかった。


その分、バドをしている時の真剣な眼差しがとても印象的だったのだ。


射るように鋭い眼差し。


一回でいいから、その眼差しで見つめられてみたいと思ったことをふと思い出した。


それが、今現実になっている。