世界一幸せな国Ⅰ

裕二side




あの男が、彼方を撃った。



藍乃も撃たれた。






藍乃の遺体は、どうしようもないくらい悲惨だった。



肺に銃で穴を開けられ、更に、屋上から落ちた。


全身の骨が折れていただろう。




言い方は悪いが、ぐちゃぐちゃだった……



でも、幹部たちに気づかれないよう、あいつらまで死なせてしまわないよう、端にやって俺の帽子を顔に被せてあげるぐらいのことしか出来なかった。







彼方は、心臓に一発。


一瞬だった。




驚いて動けなかった俺に、



『裕二さん、絶対……捕まえてね』




そう言って、体を押した。







そのせいで、彼方は撃たれた。


彼方は今日、言っていた。




『俺はどのみち今日死ぬ運命なんだ』




と。



だからこそ、救わないといけなかったのに……。





俺は、殺人者と一瞬じゃないか。