世界一幸せな国Ⅰ




裕二さんが銃を構えて走ってきた。





男が、手に持つ銃に力を込めた。



……と、ふと、俺を抑える男の手の力が緩んだ。



チャンス!!




この隙に、俺は男の腕から抜け出した。




そして、銃を蹴飛ばして言った。


「裕二さん、今!!」



裕「ああ!」




裕二さんがそう言って手錠を出し、男に近づいた。


俺は、その瞬間、この男がニヤリと笑ったことを見逃さなかった。





あぁ、藍乃もこういうことだったんだな。



こうやって人を油断させるんだ。


毎回、毎回。




でも、今回は……


裕二さんは死なせない。





今回死ぬ運命なのは、俺なんだから。