「……と、ところで、ユアン?母様たちや子守がいるのにどうやって抜け出すつもりなの?」
続く沈黙を破りたくなり、聞いてみた。
ユ「ローナ馬鹿なの?僕たちには魔法があるんだよ。それを使わなくてどうするの」
「うぅっ……」
辛辣な言葉が私を刺す。
しかし、それでもなお分からず困っていた私を、ユアンはまた刺してきた。
ユ「まだ分かんない?この世界に住み始めて何年なの。……分身作ればいいだけじゃん」
「……あ」
考えてみれば、それは簡単なことだった。
分身は、名の通り自分の身代わりを作ることができる。
どのくらい精密かは、造る本人の魔力に関係している。
ある程度魔力が強くなければ、分身はあくまでホログラムだ。
もちろん映像なので、影は出来ない。
その中でも魔力が強ければさわるまで本物だと思い込むほどの密度だし、弱ければ色味の薄い、透けたものになる。
そこからさらに強い魔力だと、実体を持つ。
また、実体を持つ分身は考える力を持ち、普通に生活を送ることができる。
ただし、最長16時間だ。
さらに、その16時間の間、ずっと絶え間無く魔力を送り続けないと体を維持できない。
製作者が弱るにつれ、分身も弱り、仮に製作者が死ぬと、分身は消えてしまうのだ。
作ってみないことには分からないが、おそらく実体は持つだろう。
言語能力は見て確認するしかない。
ユ「僕たちの力を信じよう」
「うん、やってみようか」