四季。姉の戻らない秋





姉が死んでちょうど1年。

仕事帰りらしい彼がやって来た。

少しやつれたように見える彼はわたしを見るなり、無理すんなよ。と言った。

姉の仏壇に持ってきた干し梅を供え手を合わせる彼の背中を、わたしと母はなにも言わずに見つめていた。

広がる線香のにおいに、死と向き合うことの意味を考えた。


しばらくして帰宅した父の誘いを受け、彼はまたわたし達と食卓を囲んだ。

この日ばかりは父も母もほんの少し口元をゆるめて話していた。

帰り際に彼はわたしの頭に手を乗せて、いつでも掛けてきていいからと自分の携帯の番号が書かれた紙をわたしにくれた。

戻ったリビングはまた静かな空間になっていたけれど、彼が来る前とは微妙に違って見えた。

なにが変わったのか、わたしにはわからなかったけれど、違った。

携帯に彼の名前を登録して、もらったメモを抱きしめて眠った。


その夜観た夢は、むかし家族で旅行で行った、とある島でのバーベキューの思い出だった。