「わたし達3人でも、家族…?」

「家族だよ。当たり前だろ…」

「…っお父さん…」

父も母も、わたし達を家族と言った。

家族で頑張ろうと、言った。

たったそれだけの言葉なのに目の前の父と母の頬も濡れていたから、みんな同じものを望んでいたのだと強く感じた。


そう。
わたし達は家族なんだ。

例え姉がいなくなったとしても。


胸に刺さっていた彼の言葉がやさしく揺れて響く。

姉を想えば心は辛く痛み、それはもう癒えることはないと悟る。

でも、それでいいと思った。

この先一生付き纏う名前のない涙を何度でも拭い、大切な人を失った痛みに触れて生きていく。

それが家族だから。

失うということだから。


大切なものは形を変えても大切で、彼にとってもわたし達にとっても、皆川四季はかけがえのない存在なのだから。


悲しみから目を逸らさず、振り返った先で姿を追って嘆いてはいけない。

それが死と向き合うということなのだ。


父と母とわたし、3人で寄り添って泣いた。

姉のことが大好きだと、いなくなって悲しいと、父と母が大切だと、しゃくり上げる咽喉で、震える唇で何度も唱えた。


わたしの手のなかで細かく動く秒針を見て思った。

今度、父と休みを合わせて姉の腕時計の電池を交換しに行こう。


部屋に戻ったら彼に電話を掛けよう。

伝えたいことが、聞いてほしい話が、たくさんある。