『暦。部屋散らかしすぎよ。ちゃんと次の休みの日に片付けなさいね』
そう言われたのは姉の命日から1ヶ月ほど過ぎた日の、学校から帰ってきてすぐだった。
母はリビングのソファーで紅茶を飲み、毎月購読している料理本のページをめくっていた。
わたしは母に言われた言葉の意味をしばらく考えてから返事をした。
主に服の散乱した自室のベッドの前で立ち尽くした。
母はわたしに部屋を片付けなさいと言った。
無言で足元に落ちていた白いニットを拾い、ぼやける視界に蓋をした。
姉が死んでから、自分の部屋を掃除したことなんてなかった。
小物入れからなにまで、毎週のように母が整理をして、持ち物の管理をしていたから。
母に夕飯へ呼ばれるまで部屋を片付けた。
伏せられていたコルクボードを立て、倒れていたクマのぬいぐるみをきちんと座らせた。
変わり始めたなにかに確信を持った、雪の降る夜だった。


