そっとリビングのすりガラスを覗き込み、耳をあてる。
「紗代子さん、里衣奈は私達の本当の娘のように、愛を持って育ててきました」
「えぇ。それは分かっていますよ」
「だから、私達に里衣奈を任せてくださいませんか?」
「でも・・・」
「私達、霞花浦一家にとって、里衣奈は大事な存在なんです!だから、お願いします。私達一家には里衣奈が必要なんです。よろしいですか?」
「仕方無いですね。すみませんが、あなた達に任せますね。」
「ありがとうございます!本当にありがとうございます!」
瑠奈さんの嬉しそうな声が響く。
あ、れ、あたしなんかを必要としてくれて、愛を注いでくれてたなんて・・・とても嬉しい
「おい。お前、本当にうち出るのか?」
すると、突然霞花浦に声をかけられた。
「ふぇ?!」
驚いて間抜けな声を出してしまっちゃった
「びっくりしたじゃん。わかんないけど、多分でないよ。」
「そうか」
「うん」
あ…れ…?
なんか、頬に冷たい水が流れた
まさか…
あたし、泣いてるの?
お父さんとお母さんが死んでから、泣かないように笑顔で頑張って来たのに・・・
あたしの為に反論してくれてる、瑠奈さん。
心に温かい液体が流れ込んで、胸がポカポカする。
「悲しくなったのか?」
「いや、なんか・・・うん。」
「お前が泣くなんて似合わねぇーぞ」
「ご・・・めん」
そういうと、いつも馬鹿にしてくる霞花浦が、あたしを抱き寄せてきた。
人間って温かい動物なんだね。
「泣き止むまで俺の胸、お前に貸す」
ポカポカとドキドキが混ざって、なんかこたつに潜ってるような気分になっちゃったよ。
心臓、そんなにバクバク言わないでよ
霞花浦に対して、好きって感情抱いてるのばれちゃうじゃんか・・・
