ゾクリと背筋に悪寒が走った。

(まただ。この重圧は一体、何なんだ?)
 真がハッとする。

 真後ろだ。

 勝利を目前にして、心の隙間に油断を生んでいた。
(オレは策に溺れていた)

 《彼》の存在を度外視していたオレのミスだ。

(オレはずっと、「二人」を相手に戦っていたんだ・・・)
 武居総司と、そして―

 真は顧みた。
 戦闘から注意がそれた瞬間、傷だらけの総司の拳に吹っ飛ばされた。
 が、今の真に頬の痛みなどどうでもいい。

   重圧の正体は、竜巻の監獄の渦中に在る。

 背筋に戦慄が走った。


   ―《彼の御方》が黄泉返る。


「させるかッ」
 片膝づいた体勢のまま、顔の血さえぬぐわず、両手を振り上げた。
 血で染まった真紅の竜巻が絶叫する。五本全ての気流が火花を撒き散らし、うねり絡まる。
 五匹の大蛇が超下降気流を起こす。

「超下降噴流―《ダウンバースト》!」