「言われるまでもねぇ」
 煙る白銀の霧の向こうで、総司が宣戦布告する。

 総司と真―
 能力者同士の戦いのキーポイントは万華石だ。
 砕くか、砕かれるか・・・
 勝利するには相手の万華石を砕かねばならない。逆に己の万華石が砕かれれば、《力》の全てを失う。

 そして万華石が砕かれるということは即ち、死を意味する。

 生体機能の停止なくして、万華石の摘出及び破砕は不可能だからだ。

 しかし今の総司の目的は、高崎真という眼前の敵の万華石を撃砕することではない。
(卓也の救出が最優先だ)
 タイムリミットは五分。
 真にはまだ六本の気流が残っている。
 彼はどう出る?

 ―いや。
(迷っている時間はない)

 こうしている間にも、卓也の命の秒針は時を削っている。

 先に仕掛けたのは総司だ。
 念じた右手が光を帯びる。
 高まる《力》が純白の雪を生む。
 雪の流砂が吹雪と化した。雪つぶてが木立の葉をさらい、真めがけ突き進む。
「甘いよ」
 真が総司の懐に飛び込む。
 だが、その動きは読んでいる。最初の吹雪はオトリだ。
 総司が左手に《力》を込めた。
(次の吹雪を正面からぶつける)
 間合いは、この瞬間しかない。

 今だ。

 全身全霊の一撃を撃つ。