「好きにしろ。今回に限り、お前の行動を許可する」
 彼の憎しみを止める術を、総司は知らない。
 しかし今は卓也の救出が先決だ。
「悪いな」
「また礼か。これくらいで礼には及ばん」
「そう言ってくれると気が楽だ。・・・じゃ、後は頼んだぞ」
 雅樹を病室に残し、総司は一人駆け出した。

 それにしても・・・

(「後は」だと?)

 総司の言い残した言葉が気になる。
 何のことだ?
 室内を一周ぐるりと見渡して、ハッと雅樹は眉間を寄せた。
 ・・・すっかり忘れていた。

 ―そこには茫然自失の平塚紫乃が・・・

 この状況を一体全体どうやって収拾しろというのだ。
「総司ッ」
 叫ぶが、時既に遅し。
 この部屋に総司はいない。