あの子じゃなくて私を見て


「本当に大丈夫なのか?」


顔を覗きこまれる。


「大丈夫だよ!先生」


そう言いながらも、ふいに目をそらしてしまう。


「……そうか!だったら良い、なにかあったらすぐ言えよ」


頭をポンッと軽く叩いて去ってゆく。
きっと先生なりの気づかい。

先生は無理やり何かをさせることを嫌う。

今回も、言いたくないのだろうと思って
聞かないでくれたんだ。

嬉しい気持ちと同時に、何かが吹っ切れた。


「……こんなに悩んで、バカみたい」


私は鞄を持って、
急ぎ足で家へ帰った。