あの子じゃなくて私を見て


「ごめんな、本当。ほたるのことは嫌いじゃないから」


(どうしよう。なんて返せば……)


私は、いつもどおりを演じて
瑠衣の背中を力いっぱい叩いた


「っ痛!」


「もう、気にしないでよ!私だって高望みしてたわけじゃないし、明日からは元通り、仲良くしてね!」


ちゃんと笑えてるかな?
不安になる。


「ありがと。じゃ、また明日な」


どうやらごまかせたみたい。
瑠衣は笑ってる。


瑠衣が背を向け教室から出ていく。


そのときには、視界が滲んで
前があまり見えなかった。



次に目を拭ったときには
もう目の前に瑠衣はいなかった──。