あの子じゃなくて私を見て


家に帰り、気を紛らわそうと漫画を手に取る。


「…………」


チラチラと時計に目をやる、一向に時間は進まない。


ヴー。ヴー。


携帯電話が鳴った。

外はもう暗い。
いつの間にか寝てしまっていたようだ。

私は気だるそうにディスプレイを除く。
だけど、内容を見た途端にその気だるさは一気に吹き飛んだ。


「嘘……」


【件名】無題

【本文】フラれちゃった。
もう俺ダメかも。
ほたる、会いたい。


「なんでフッたの、叶愛……」


時計に目をやると、午後八時を過ぎていた。


「もっと早くメールしてくれれば良かったのに」


ハンガーにかかってある上着を無理やり取る。
反動でハンガーが落ちた。
でも、そんなことは気にせず、家を飛び出した。