あの子じゃなくて私を見て


ピンポーン~♪


「あ、来た来た!いらっしゃ~い」

「豊永さん、いらっしゃい!ささ、座ってください」

「ほたるちゃん、悪いねえ」

「いえいえ、だってお父さんになる人だもん!」

「まぁ、ほたるったら」


食卓では、会社での面白いミス・お母さんのダジャレ・笑い話などをして盛り上がっていた。


(はぁ、早く帰ってくれないかな)


作り笑いばかりを浮かべながら、『再婚相手を喜ぶ娘』を演じるのなんて、簡単なことだった。


「ほたるは、仁さんがくるのずーっと楽しみにしてたのよ」

「もう!お母さん、それは言わない約束でしょ」

「あら、そんな約束したかしら?」

「もーー!」


(ほんと疲れるなぁ、この演技)