「ただいまー」
玄関からはいつもとは違う、豪華な料理の香りがした。
(あぁ、今日あの人くるのか……)
「おかえり~♪お母さん、頑張っちゃった!今日仁(ヒトシ)さんくるから、早く準備して!」
豊永 仁(トヨナガ ヒトシ)42歳。
結構大きな有数会社の社長で、お母さんの再婚する予定の相手。
お母さんは、私が幼い頃に離婚してて、豊永さんは一年前に出会った運命の人らしい。
私は豊永さんのこと、誰もいないところではあの人って呼んでる。
私の中では、再婚してほしくない気持ちがあるからだ。
お父さんなんて……一生かかっても言いたくない。
(でも、お母さんには笑っててほしいからなぁ)

