ワーキングガールズ・クリスマス

千秋さんがあたしのこと好きなわけないのに。


……あの日から、両親があたしを置いて去った日から、あたしは笑顔でいるって決めたの。


あたしの笑顔でみんながホッとしてくれる。


だからあたしはいつも笑顔でいるの。


誰にも涙は見せずに。


「え?なにがですか?
あたしは別に具合悪くなんてないですよ」


顔の前で手を振り、少し大げさに笑ってみせる。

ごまかしたいの、触れないで、触れないで。


そう願うのにそれでも彼は。


「いつも笑顔の弥生先生だって、泣きたい時もあるでしょう?」


持ち前の鋭さで核心を突いてくるのだ。


まるであたしの過去を知り尽くしているみたいに。


「う……」


あたしの頬を涙がぽろぽろと零れていく。


とうとう泣きだしたあたしを見て苦笑した千秋さんは、男性にしては柔らかい、でも大きな手であたしの頬を包み、指で滴を拭ってくれながら優しく言う。



「泣きたい時は泣いて、淋しい時は淋しいって言って下さい。
一人で泣けないなら、淋しいって誰にも言えないなら俺が側にいます。

じゃなきゃ、笑顔の弥生先生は、笑顔じゃなくなっちゃいます」


そしてぎゅうっと抱きしめて、俺、弥生さんの笑顔大好きなんですなんて、益々涙が止まらなくなるような嬉しい言葉を言ってくれた。


「……グス、ありがとうございます」