ーー毎日汗だくになって息子を迎えに来る父親の姿が眩しくて。


……そうなると千冬くんとお話したり、遊ぶことも多くなるし、その親御さんである千秋さんとも話す機会が増える。


携帯の番号やアドレスも知っているから連絡もよくとる。


それを見て、他の先生や園長はあたしと千秋さんを疑うのだ。

付き合ってるんでしょ?と。


分かっていて敢えて言っているのだ、あたしが真っ赤になって否定するのが面白くて。


確かに本音を言えばあたしは千秋さんが好き。


でも、シングルファザーとして頑張る彼を困らせたくはなかった。


仮に付き合うとしても、彼の親がどう言うかは分からないし、何より彼にはちいくんという大事な息子さんがいるのだ。


どういう経緯でお母さんがいないのかは定かではないけれど、母親の話が彼の口から出ることは滅多にないし、話すことがあってもいつでも淋しそうだったから。


きっとちいくんの母親と千秋さんとの間には、あたしには到底理解しえない目に見えない何かがあるのだと思う。


残念ながら、あたしにはそこに踏み込んでいけるほどの根性もなければ自信もなくて。


「……寒いなあ」


冷たい風で冷えてくる鼻をマフラーに埋めながら、あたしは昨夜電話した際友人に言われたことを思い出した。


『一体何年そうしてるつもり?
そんなんじゃ都合のいい家政婦とおんなじじゃないのよ』