誰にも見せたくないよ、舞。


そう、弱い方の右耳で甘く囁いた。


下の名前で囁かれたくらいで腰砕けの私は、真っ赤になって彼を睨むことしか出来なくて。


もう、彼の言いなりだ。


「俺のこと好き?舞」


「そ、そんなのっ…ん、」


分かってるくせに。


私の口から言わせようとして、煽るように首筋に唇を押しあててくる。


私が必死で声を抑えているのを、彼は満足そうに笑って。


「……俺が好きだと言えよ。
英明、好きって」


唇をギリギリまで近づけて、吐息で誘ってくる。

それが、意地悪のなかに素直になれない私を誘導してくれる優しさを含んでいると気がついて、胸がキュンとした。


聞いて、私のほんとの気持ち。


「英明…大好き」


その言葉に今まで見たことないくらい嬉しそうに彼が笑ったのを、私は一生忘れないようにしようと思った。


唇までの距離がゼロになる直前に彼が囁いてくれた言葉も。


「愛してる。」