──ジュ…………


煌太によって作り上げられた氷は音をたてながら、葉月の札によって蒸発していく。



氷が全て溶けたときには、周りはすでに、水蒸気で視界が悪くなっていた。



はっ、と気づいたときには、もう遅かった。


──たった1秒。

氷が溶けきる、その1秒の間に、龍樹がボールを奪っていたのだ。


そして、くるりと方向を変え、ダンダンとドリブルをしながら遠ざかって行く。


──あと2秒。

龍樹がゴールをするまで、あと2秒しかない。


2秒で、私に出来ることは──。




“テレポーション”




頭の中でそう唱え、神経を尖らせる。

自分が、龍樹が向かっていった方向のゴールの真下に立っているようなイメージを想像し、一瞬だけ瞬きをする─…。



コンマ1秒。

目を開けると、イメージした場所に、私は立っていた。


瞬間移動が成功したのだ。



目を見開く龍樹を視界に入れながら


“風”

と、強いイメージで唱える。




──その瞬間